2025年12月27日土曜日

ルックバック


『ルックバック』(2024年) 
 
Netflixでアニメ『ルックバック』を観た。
 
なんの予備知識もなく、Netflixで見つけたので偶然観てみた。物語は東北の田舎に住む女の子たち、藤野とその同級生京本が漫画家に成長していく物語。京本はひきこもり。藤野は学年新聞に4コマ漫画を描いている。二人は偶然出会い、漫画を共作し、入賞して漫画家への道を歩んでいく。しかし、京本は途中から絵が上手くなりたいという理由から美大に進学を希望するようになる。二人の道はそこで分かれて、藤野は一人で漫画家になっていく。そして、藤野は人気漫画の連載を持つようにまでなる。 そんなときニュースが飛び込んでくる。京本の通う美大に不審者が侵入して殺人事件を起こしたというのだ。藤野は驚いて連絡をとろうとするも、京本は帰らぬひととなっていたのだった。後から知ったのだが、この事件は京アニ事件がベースになっているらしい。藤野は故郷に帰り、京本の部屋の前に立つ。藤野が京本を部屋から引っ張り出さなかったら、京本は死ななかったのではないかと自責の念にかられる。そして、藤野と京本が出会わなかった世界を想像する。そのとき、藤野は足元に京本の描いた4コマ漫画を見つける。そして、藤野は京本の部屋へ入り、京本が藤野の漫画をたくさん並べて藤野を応援していたことを知る。そして、ドアには藤野が京本に初めて出会った日に書いた、藤野のサインが入った半纏が吊るされていた。藤野は這い上がるようにして立ち上がり、仕事場に戻ると、デスクの前に4コマ漫画のコマ割りを貼って、再び漫画を描き始めるのだった。
 
京本がひきこもりで不器用でピュアなところがとても惹かれる。いろいろとズレたところも面白く、そのズレが藤野を励ますキッカケにもなっている。
 
4コマ漫画がとても上手に使われている。偶然、ドアの向こうに滑り込んでしまったり。あるいは、京本からの手紙のように藤野の足元に落ちていたり。また、この4コマ漫画は大人が描く4コマ漫画ではなく、子どもが描く4コマ漫画で、どこかシュールで、荒削りで、でも、大人には描けない何かなんだ。そして、京本からの手紙のような4コマ漫画のタイトルは「背中を見て」で、 これは半纏の藤野の描いたサインにもつながっていく。以前、藤野が「京本も私の背中を見て成長していくんだな」と偉そうなことを言っているのが伏線にもなっている。 エンドロールは漫画を描いている藤野の背中になっている。
 
京アニ事件があるからだろうが、とても切ない話だ。とても良い物語だった。
 
日本の田舎が描かれていて、そういえば、『鬼滅の刃』の作者は九州出身で、この作品の作者は東北出身らしい。なにか、そこにもアーティストが生まれる要素があるのかもしれない。
 
ところで、この作品を見終わったとき、私は作者はてっきり女性かと思っていた。ところが、調べたら、男性でしかも『チェーンソーマン』と同じ作者だそうだ。しかし、私は、もしかしたら、作者は女性ではないかと疑っている。あんなに流血の多い『鬼滅の刃』も女性だし、『チェーンソーマン』だって女性だったとしてもおかしくはないと思う。 とはいえ、まあ、男性なんだろうけど。ちなみに、シェークスピアの作品も女性が書いたのではないかという説がある。内容が女性的な面があるからだ。この『ルックバック』という作品も女性が描いたのではないかという気がしている。
 
さて、ネットで調べていたら、この『ルックバック』、是枝裕和監督が実写映画化するらしいということが分かった。
 
本当に偶然にこの作品を観たんだけれど、見て良かった。