2020年7月5日日曜日

日本を変革する(4)記録・蓄積

日本を変革するシリーズの最後です。最初、家族を変えるから始まり、市場を変える、日本の構造を変えると続きました。最後は、それを永続的なもの、持続可能なものにするための方策です。それは記録すること、そして、その記録を蓄積することです。

(1)意思決定過程を記録する

日本に一番欠けているものは意思決定過程を記録しないことです。ひと言で言えば、公文書管理がなっていません。なぜそうなるかは簡単です。物事を空気で決めるからです。もし意思決定過程を記録に残してしまうと責任の所在がハッキリしてしまうからです。道理がなくて空気で決めているので、意思決定過程を記録してしまうと、もろに責任が当人に降りかかるからです。

物事を空気で決めてしまうのは、いくつか理由があります。一つは日本人は議論ができない。議論をケンカだと思っている。物事を道理で決めるためには議論が必要なのにそれができないのです。もう一つは物事を道理で考えることがとても苦手です。日本人は抽象的に考えるのが苦手なので、道理で考えるのも苦手です。ロジックを積み上げるのが苦手なのです。さらに物事の大小が区別できない。具体的なものなら大小が区別できるが、抽象的なものになると大小の区別ができない。しかも、大小の区別ができないから枝葉末節にこだわる。枝葉末節を大なるものと勘違いしている。さらにそれが枝葉末節であると他人から指摘されても、議論が苦手なので他人の意見を受け入れられない。自説を曲げられない。ロジックの組み上げは共同作業のはずなのに、まるで勝敗を決める将棋の対戦でもしているかと勘違いしている。そのため、議論そのものが成り立たない。以上のような傾向があるから、日本人は空気で物事を決めるのが良いと思っていて、それを実践している。

そして、空気で物事を決めてしまうと、意思決定過程を記録するのが困難になる。なぜなら、そこにロジック、道理がないからです。日本人の意思決定は、ただなんとなく、その場のモヤモヤ~っとした雰囲気で決まっただけなのですから。なので、記録ができないのです。

さらに、議論の行方を黙ってうかがっている人の中には損得勘定を働かせている者もいます。黙って議論を見守り、自分の得になりそうな機会があれば、自分の損得勘定を他者に悟られないように注意しながら、議論の方向をそれとなく自分が得になる方向に向かうように促したりします。こういうたちの悪い輩が黙っている者の中には隠れています。

さて、こういった問題は教育の問題だと思います。学校教育で複数人における議論と意思決定過程の記録をする訓練をしておくべきです。なんでも良いのですが、例えば10人の昼食費1万円が与えられたときに何を食べるかを意思決定させる練習をするのです。同じものなのか、バラバラなのか、あるいは、みんな同じ店か、ばらばらに買いに行くかすべて自由です。どういった選択をしてもかまいません。ただ、議論とそれを記録するということだけはしっかりやる。

私の周囲の大人たちを見ていても複数人での意思決定が苦手だと感じます。大抵、遠慮がちです。ここでの遠慮がちは美徳ではありません。空気をうかがっているのです。合理的な選択や自由意思を尊重しようという気配はありません。日本人が気にしているのは集団心理です。極端な言い方をすると、自分が集団からいじめられないように周囲に気を配っているのです。これは人間の心理というよりは、サルの心理に近いです。彼らは道理が大切なのではなく、ボス猿のご機嫌が大切なのです。

(余談ですが、日本人の心理には、『浦島太郎』の古来からいじめがセットされていて、現在も学校教育がそれを培養しています。日本人がより良く変わるためには、いじめを克服する必要があると思います。)

(2)データを蓄積する

さて、記録を習慣化できれば、あとはそれを持続することです。そうすれば、記録がどんどん蓄積されていきます。そして、記録を振り返ることで何らかの知見が得られるはずです。ところが、日本人は記録を蓄積することが苦手です。日本人の生き方は刹那的です。「今が良ければ良い、明日のことは知らない」という人が意外と多いです。

なぜそうなるのか?日本人は記録というよりは書類を作っていると感じています。つまり、極端に言えば、お役所に必要な書類を作っているのです。お役所に必要な面倒な書類作成だと思っているのです。だから、面倒な仕事は増やしたくない。お役所が要求する書類だけ作っていればいいという感覚です。

それともう1つ、日本人は物は重視しますが、情報や知識、そして人間を軽視しています。情報や知識は抽象的な部類に入るようで物のように大切に扱われません。そして、人間。人物は複雑です。人物は物ではありません。人格は複雑なソフトウェアです。日本人の人物評、人間観察力は単線的で浅いです。人間を軽く見ています。個人の自由意思や人権を軽視しています。日本人の大切なものは、物とお金です。知識や個人を軽視しています。世界が知識社会に移行したとき、日本はついて行けませんでしたが、理由は簡単で、知識を軽視したからです。日本の没落の原因のひとつがそこにあります。

話が脱線しましたが、繰り返しになりますが、記録を蓄積し、時々、振り返れば、そこから新しい知見が得られると思います。後はPDCAサイクルでシステムが改善されていくと思います。なので、徹底的にデータを蓄積していくことです。

まとめ
変革の方策はとてもシンプルです。記録すること。そして、その記録を蓄積することです。そして、時々、それらを振り返って改善してゆくことです。