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2020年12月27日日曜日

今年の振り返りと来年に向けて

 
1.振り返り

今年のこのブログを振り返ってみる。

まず、『21世紀はセックス革命の時代』を書いた。これは性の多様性が重要だし、それが広まってゆく、いや、期待したいし、その過程で摩擦も生じるだろう、という予測と願望で書いた。その関連で『日本を変革する(1)夫婦中心の家庭へ』を書いた。日本ではこれまで性がタブー視されていたが、セックスライフは人生の重要な一部なので、もっと性について知識を深めなければならないという思いで書いた。性の多様性は個人だけでなく家族や職場や社会に大きな変化をもたらすと思う。トランスやオープンマリッジなど様々な点で人々はより自由なセックスライフを送れるようになれると期待したい。(セクソロジー)

21世紀は格差社会の時代』も書いた。これはトマ・ピケティの『21世紀の資本』そのままだ。格差を解消するためにはどうすれば良いか?主に2つあって、再分配と経済成長だと思う。これは別に二者択一というわけではなくて、両方を追求すれば良いと思う。ただ、再分配は政治力が必要で、富裕層がタックスヘイブンなどに逃げられないように包囲網を敷いて公平に課税する必要がある。再分配もいかに分配するかが問題になってくる。思うのだが、ケインズが当初に構想したIMFもこういったグローバルな展開を予見してのことだったのではないかと思う。(モラルサイエンス)

ただし、日本の場合は『日本を変革する(2)市場を真っ当にする』と『日本を変革する(3)地方分権とネットワーク』で書いたように、長年続いた戦時経済体制のためにレントシーキングが生じてしまい市場原理が正常に機能していないし、中央集権体制のため硬直化してしまい非効率な生産システムになっている。そのため、経済成長も再分配もしずらくなっている。日本はまず基本的なシステムの構造改革しなければならい。つまるところ、ツリーとネットワークの最適化ということになると思う。ツリーを中央集権から地方分権に変え、さらに横断的にツリーを補完するネットワークを構築・育成することだと思う。また、非生産的な残業を廃止することで労働時間を短縮して、人々が地域社会に市民参加できる余裕を作ることだと思う。(日本の変革)

21世紀の生存戦略』では個人が生きるためには3つの知を磨き続けること、学び続けることを書いた。3つの知とは、全体知、専門知、人間知の3つだ。まず、生きるためには専門知を身につけねばならない。しかし、専門知だけではダメだと思う。広い知見が必要だ。かつては教養といったが、私は全体知と呼ぶ。さらに限られた時間や条件の中で最大限に学ばねばならない。そのためには己自身をよく知る必要がある。それが人間知だ。この3つを磨き続けること、学び続けることだと私は思う。(生存戦略)

ちなみに『仏教のすすめ』も書いたが、これは人間知に属する部分もあるかもしれない。ただ、どちらかといえばブッディズムは生き方を多く含んでいる。逆転した見方をすれば、ブッディズムはヨガ的生き方の一変種といえるかもしれない。実際に行っていることはヨガととても似ている。ただ、ブッディズムの場合は性的な禁欲という点でヨガと異なると思う。21世紀の仏教は宗教ではなくて、ヨガなどと同じライフスタイルのひとつと捉えるべきだと思う。(ブッディズム)

日本を変革する(4)記録・蓄積』はPDCAサイクルをより大きくしたものだ。『21世紀の生存戦略』でも触れたが人間知を磨くうえで大切なのは記録して振り返り改善してゆくというプロセスだ。日本ではこれがあまりにも粗末にされている。これを改善せねばならない。

足早に振り返るとざっと以上のようになる。

見立てとしては、おおむね間違ってないと思う。いや、当たり前過ぎる話かもしれない。しかし、実際に実装されるにはまだまだ程遠い。個人としては鋭意努力している。日々、学び続けているつもりだ。しかし、問題は日本だ。日本は1990年から本質的に変わっていない。失われた10年と言われた頃から変わっていない。いや、変わったかもしれないが、悪い方向に変わっている。格差は広がり、財政は悪化を増している。日本の企業は競争力をどんどん失っている。いつ、ジャパンクライシスが起こってもおかしくない。貧困は多くの人々を、特に弱者を不幸にする。そんな悲劇はなんとしても避けたい。

2.三つ巴

私は、日本には3つの勢力があると思っている。保守、リバタリアン、リベラルの3つだ。ただし、多くの日本人たちはそのことに無自覚だと思う。人々は「自分は保守だ」とか「自分はリベラルだ」という風に考えてないと思う。むしろ、「自分は普通の日本人だ」と考えている人が多いのではないかと思う。あるいは、言い換えると「自分は偏っていない。自分は普通なんだ」と考えている。でも、それは無意識な自分中心主義だと思う。社会は多様な人々がいて、多様な人々が共存してゆくための手続きとして民主主義があると思う。「私が普通なんだから、他人は私に合わせろ」ではなくて、「あなたと私では考え方が違う。しかし、それでも同じ社会に暮らしてゆくために互いに協力しましょう」というのが市民社会ではないかと思う。なので、最初に話を戻すと、日本人はまず互いに違うということ、そして自分はどの勢力に近いかを自覚することから始めなければならないと思う。

私の感触では、日本人の多くは保守にあてはまると思う。日本の多数派は保守だと思う。逆にリベラルは少数派だと思う。さらに保守にもリベラルにも違和感をおぼえる人は少なからずいて、おそらく彼らはリバタリアンだと思う。実際、数的にはリベラルよりリバタリアンの方が多いと思う。また、リバタリアンはリベラルよりは保守の方と相性が良いと思う。逆にリバタリアンはリベラルに対して部分的に嫌悪感すら感じていると思われる。

さて、私自身はリベラルだと思っている。リベラルが描くような自由に生きられる社会を目指している。だから、リベラル派が増えることを願っている。もちろん、リベラルは研鑽を積んで、今よりもより良く変わっていく必要もあると思う。また、他の勢力とも共存可能だと考えている。なぜなら、個人が自由に生き方を選択できるように選択肢を増やすのだから、保守的に生きたい人もリバタリアン的に生きたい人もその生き方をそれぞれ選択可能だと思うからだ。

ところで、外国に目を向けてみる。米国はどうか。保守とリベラルの分断が鮮明になっている。とはいえ、エスタブリッシュメントはコスモポリタン(裏を返せば帝国主義)だ。プアホワイトが狭量なナショナリズムになっているだけだ。ただ、アングロ・プロテスタントな文化がヒスパニック系に侵食されているのが気になるが。中国はどうか。共産党独裁は変わらない。ITの進歩によって監視社会がより強化されてしまった。ますます中華中心主義が蔓延るだろう。さらに儒教によってノモス化された中国的な全体主義が世界を席巻するかもしれない。日本も巻き込まれるかもしれない。

日本は中国・韓国と比較した場合、経済的に一番後塵を拝する立場になると思う。したがって、日本の保守主義は内側に向かうしかなくなる。悪くすれば、狭量なナショナリズムに陥る可能性がある。ともかく、外へ向かうだけの力は日本には最早無い。

私としては、日本の3つの勢力(保守、リバタリアン、リベラル)が単に争うのではなく、互いに協力したり、他勢力からの批判に対して自己に磨きをかけて成長することが望ましいと考えている。そして、3つの勢力が共存してゆくのが望ましいと思う。ただ、今の状況は旗色が不鮮明で、互いに敵味方がよく分からず、仲間だと思っていたら違ったので憤慨したとか、逆にあいつらは敵だからあいつらには徹底的に反対で話し合う余地はないのだとか、そういう不毛な形勢になっていると思う。そうではなくて、互いに違いを認識しつつ共存してゆける関係に持ってゆくべきだと思う。

振り返りで示した問題解決の提言を実現するために、リベラルの啓蒙と3つの勢力の鮮明化はつながっていると思う。日本はとかく無意識・無自覚で、戦略に欠け、場当たり的な振る舞いが多い。それを止めるためには旗色を鮮明にして互いに研鑽してゆくことで問題解決に至ると思う。

最後に、おそらく数的には

保守>リバタリアン>リベラル

の順だと思うので、リベラル派を増やすべく啓蒙してゆきたい。

それと、来年は読んでいる本のことや考えていることなど、もっとざっくばらんにフリーライティングな感じで書いてゆきたいなと思う。今もそうだけど、あんまり文章にまとめることに力を注ぐよりは、メモ的に断片的にであっても、とりあえず書き残してゆくことに注力する方が今は良い気がしている。

2020年12月26日土曜日

NEWS2020.12

 
12月1日(火)
日本の差別を取り上げた良い話。

話がズレるが、AIが人間を超えはじめた。逆に人間の性質も分かりはじめた気がする。ともかく、将来、科学を更新するのは人間ではなくAIになってしまうかもしれないなあ。

12月2日(水)
中国の国家権力の恐ろしさ。

12月3日(木)
振り返ってみると、検察庁法改正案の攻防が実に大きな分岐点だったのかもしれない。もし改正されていたら、日本は恐怖政治になっていたかもしれない。

12月4日(金)
とりあえず、核融合を起こせる高温にまで達せられることに成功したということだと思うのだが。とはいえ、それはとても凄いことだと思う。

12月7日(月)
Googleには邪悪になってほしくないのだが。最近のGoogleはどうしちゃったんだろう。

12月10日(木)
クリーンミートがまたひとつ進歩したみたい。凄い。

12月13日(日)
本筋とは少しズレるが、最後の方で話されたデンマークの教育の話が意外と興味深かった。宮台氏の多幸感と幸せの違いの話はとてもスッキリと理解しやすくする良い話だった。

うわぁ!

引き上げた方がいいよね。13歳は心身ともに未成熟だ。

12月15日(火)
Googleのサービスが使えなくなるのは、かなり実害が出るのを実感した。

いろいろな側面で考えさせられる案件。

12月16日(水)
寂しい話。

12月17日(木)
宮台真司さんが”加速主義”をいうときの意味するところがよく分かる話だった。


2020年の振り返り
今年を振り返ると世界的な話題のナンバー1はコロナではあるが、日本経済に言及すると、今年は日本が韓国に抜かれた年でもある。一人当たりのGDP、最低賃金、平均賃金のすべてにおいて、日本はとうとう韓国に抜かれた。世界で成長している企業を考えると、それは至極当然なことだと分かる。数年後には日本は中国や韓国の後塵を拝することは確定している。そのことに注意を喚起しないメディアも問題だし、現実に気づけない日本人も問題だ。1990年代以降、日本の経済・財政はどんどん落下しつづけ、日本はどんどん地獄に突き進んでいる。問題が消えたわけではないのに問題を直視しないことであたかも問題が無くなったかのように勘違いしている。

セックスに関して振り返るとNetflixのドラマ『セックス・エデュケーション』第2シーズンが大変良かったし勉強になった。そして、なんといっても助産師のシオリーヌさんによる性教育YouTubeチャンネルが革命的に良かった。さらに年末に刊行された彼女の著書『Choice』が性教育の教科書として普及してくれると嬉しい。それから、津田大介さんのポリタスTVの緊急避妊薬の回で知った遠見才希子さんも収穫だった。日本の中絶で掻爬法なるものが行われていることに驚いた。彼女の話を聞かなかったら知ることができなかった。他にも女芸人のバービーさんもYouTubeで再発見した。正しい性知識を啓蒙するのに彼女も大いに貢献していると思う。海外に目を向けると米国の最高裁でLGBTを理由に解雇することは違法という判断が出たことは嬉しい驚きだった。だが、その後、ギンズバーグ判事が死去して後任に就いたバレット判事が性的嗜好発言してガッカリした。トランプの残した忌まわしい遺産だ。とにかく、日本で性の多様化がもっと進展してほしいと願っている。たぶん、願うだけじゃなくて、ちゃんと闘わなきゃいけないんだろう。

そういえば、千田有紀氏による『「女」の境界線を引きなおす――「ターフ」をめぐる対立を超えて』問題が春先にあった。難しい問題だが、トランスジェンダーを排除するのは良くない。次第に社会の認識が変わっていくものと思うし、フェミニズムも認識を変えていくと思う。

政治に関して振り返ると安倍首相が辞任したことが大きい。ただし、これは現在も続いている政府と検察による権力闘争の意味合いがあるように思う。これについて言及すると大変長くなるのでここでは控えたい。とにかく、リベラルの勝利というわけではないが、安倍首相が辞めたことは喜ばしい。その後を継いだ菅政権は日本学術会議任命拒否問題でいかにレベルが低いかがすぐに露呈してしまった。菅首相も早く退陣してほしいものだ。しかし、日本では、保守>リバタリアン>リベラルくらいの順で保守層が多いから、選挙をしてもリベラルが勝てるかは微妙だと思う。また、リバタリアンは保守と相性が良くて、逆にリベラルを嫌っているから、リバタリアンの多くは保守に投票する。なので、リベラルはもっとリベラル派を増やさないといけない。しかし、日本の大衆は政治に無関心だから、なかなか難しい。

日本の貧困問題が顕著になってきた。子ども食堂が必要な時代だ。貧困が原因の悲惨な事件を目にするようになった。ところが、私の周囲だけかもしれないが、人々は日本の貧困問題に目を向けない。貧困など無いかのように思っているか、見ても不快なので見たくないので見ないのか、見て気づいても自己責任で他人事として知らんぷりをしているかのいずれかのように思う。日本人の物心両面の貧しさを感じる。

中国の問題。香港とウイグル。かつてチベットで繰り広げられた弾圧がウイグルでさらに進歩して行われている。香港でもついに民主派の弾圧に踏み切った。そういう一年だった。世界は米国と中国の二大覇権国になるのかもしれない。中国的全体主義と米国的自由主義。その一方で、ロシアはロシアで独自の独裁国家になりつつあるように思うし、EUはEUルールを確立しつつあるように思う。日本は統制経済で戦後やってきたがそれが破綻しつつある。再び全体主義に向かうのか、あるいは米国にならって自由主義の後につらなるのかは分からない。そもそも日本は真っ当にそれらになりえたことはない。常にズレる。ただ、今度は経済力が無くなっているので、力でねじ伏せられることになるとは思う。

米国の問題。今年は大統領選が大きかった。ようやくトランプが負けた。バイデンに満足しているわけではないけれど、トランプと比べたら100万倍もマシだ。ただ、最高裁判事でリベラル派が劣勢におかれたのは残念だ。大統領選ではスッタモンダがあって、ハラハラしたが、とりあえず事前の予想通りにバイデンが勝ったので良かった。ただし、米国内の分断が大きいことを改めて思い知らされた。また、Qアノンや米国版ネトウヨなど非常に低レベルの人たちがある程度の影響力を持っていることに驚かされた。ちなみに分断自体は悪いことではないと思っている。なぜなら、人それぞれだから。むしろ、国民一丸となる方がファシズムのようで怖い。問題は課題が解決されないでいることだと思う。課題先進国である日本では課題は解決されないままずっとここまで来ている。米国はきっと解決の道を見つけると思う。

大阪都構想の終焉

学術会議任命拒否問題


2020年に影響を受けた人物やメディア
宮台真司・神保哲生(ビデオニュース・ドットコム)、津田大介(ポリタスTV)、野間易通・安田浩一(ノーヘイトTV)、荻上チキ(Session)、Netflix、町山智浩(たまむすび)、郷原信郎、三木由希子、木村草太、石川健治、野口悠紀雄、北丸雄二、雨宮処凛(マガジン9)、シオリーヌ(性教育YouTuber)、遠見才希子、バービー、要友紀子、大沢真理、山口二郎、上西充子、ChooseLifeProject、デモクラシータイムス、せやろがいおじさん、ハフポスト、毎日新聞、朝日新聞などなど。